ELC音読・音韻処理能力簡易スクリーニング検査とは
ELC音読・音韻処理能力簡易スクリーニング検査(Easy Literacy Check)について解説します。
は、特に小学校2〜3年生を対象とした、読み書き困難(ディスレクシア)の兆候を早期に捉えるための簡易スクリーニング検査です。
■ELC音読・音韻処理能力簡易スクリーニング検査とは
ELC音韻検査は、「音韻意識」という、言葉の音の仕組みに気づく力のことです。例えば、「りんご」という言葉が「り」「ん」「ご」という三つの音でできているとわかるような能力です。この能力は、読み書きを学ぶ上でとても大切だとされています。言葉の音がどうなっているか理解できると、文字と音を結びつけやすくなり、スムーズに読み書きができるようになります。
具体的には、以下の3つの課題から構成されています。
- 短文音読課題: 短い文章を音読することで、読みの流暢さや正確さを評価します。
- 音韻操作課題: 言葉の音を分解したり、合成したり、入れ替えたりする能力を測ります。例えば、「りんご」から「り」を取ったら何になるか、といった問題です。
- 単語・非単語音読課題: 意味のある単語だけでなく、意味のない音の並び(非単語)を音読することで、文字と音の対応関係をどれだけ理解しているかを評価します。
■受検する意義
主に以下の点にあります。
- 読み書き困難(ディスレクシア)の早期発見:
ディスレクシアは、読み書きの学習に特異的な困難を示す発達障害です。音韻意識の弱さがその背景にあることが多く、ELCは音韻処理能力の側面から、その兆候を早期に捉えることを目的としています。早期に発見することで、適切な支援を早く開始でき、子どもの学習面での困難を軽減する可能性が高まります。
- 教育現場でのスクリーニング:
教師が簡便に実施できるよう開発されており、多くの児童の中から支援が必要な児童を効率的に見つけることができます。
- 個別の支援計画の立案に役立つ情報提供:
検査結果から、どの音韻意識のスキルが苦手なのかを具体的に把握することで、その子どもに合った個別指導や支援計画を立てるための手がかりとなります。
- 読み書きの基礎となる能力の評価:
音韻意識は、文字と音を結びつける「デコーディング(解読)」能力やスペリング(綴り)の基礎となる重要なスキルです。この検査によって、その基礎がどの程度身についているかを確認できます。
■結果からわかること
ELC音韻検査の結果からは、以下のようなことがわかります。
- 音韻意識の発達状況:
言葉の音を意識的に操作する能力が、年齢相応に発達しているかどうかがわかります。特に、音を分解したり(音素分解)、音を組み合わせたり(音素合成)する能力に課題がないかがわかります。
- 読みの流暢さ・正確さ:
音読課題を通じて、文字を音に変換する速度や、間違いなく読むことができるかが評価されます。
- 文字と音の対応関係の理解度:
単語だけでなく、非単語を読めるかどうかで、規則的な文字と音のルールをどれだけ習得しているかが推測できます。
- 読み書き困難の可能性の示唆:
もし検査結果が同年代の子どもたちと比較して著しく低い場合、読み書きに困難を抱えている可能性、特に音韻処理に弱さがあるディスレクシアの可能性が示唆されます。
■注意点
ELC音韻検査はあくまで「簡易スクリーニング検査」であり、この検査の結果だけで読み書き障害(ディスレクシア)の診断が確定するわけではありません。もしELCで弱さが見られた場合は、言語の専門家(言語聴覚士など、ディスレクシアに詳しい専門家)に相談し、より詳細な評価や診断を受けることが推奨されています。その上で、専門家による診断に基づいた、より個別化された支援や指導が行われることになります。
臨床心理士 / 公認心理師 井上 操