コラム

2025年8月26日 | コラム

発達障害検査とアセスメント その役割と支援



発達障害は、生まれつきの脳機能の特性によるもので、その症状は一人ひとり異なります。この特性を理解することは、本人や家族が自分らしく生きるための第一歩です。ここでは、発達障害とアセスメントの重要性を分かりやすく解説します。

■発達障害の症状

発達障害は、主に自閉スペクトラム症(ASD注意欠如・多動症(ADHD、学習障害(LD)の3つに大きく分けられます。

  • ASD(自閉スペクトラム症): 社会的なコミュニケーションや対人関係の困難、限定された興味や反復行動、強いこだわりなどが特徴です。言葉の遅れや、特定の感覚への過敏さ(音、光、匂いなど)が見られることもあります。
  • ADHD(注意欠如・多動症): 「不注意」(集中力が続かない、忘れ物が多い)、「多動性・衝動性」(落ち着きがない、衝動的に行動する)といった特性がみられます。
  • LD(学習障害): 知的な遅れはないものの、「読む」「書く」「計算する」といった特定の学習能力に困難を抱えます。

これらの特性は単独で現れることもあれば、重複して現れることもあり、その表れ方は人によって様々です。

 

■知能検査とアセスメントの役割

発達障害とアセスメントは、「見えない特性を理解し、適切な支援につなげる」という点で密接に関わっています。発達障害は、その特性が外からは分かりにくいため、科学的なアセスメントを通じて客観的に理解することが非常に重要となります。

発達障害の診断や支援では、知能検査(WISC-Vなど)やアセスメントが非常に重要です。これらは、単にIQを測るだけでなく、その子の認知機能の「凸凹」を明らかにする役割を果たします。例えば、得意な推論力と苦手な視空間認知がわかれば、苦手な部分を補い、得意な部分を活かした学習方法を考えることができます。

アセスメントでは、知能検査に加えて、感覚プロファイル(感覚の過敏さや鈍感さを測る)やAQ検査(自閉スペクトラム症の傾向を測る)などを組み合わせることで、より包括的で立体的なその子の姿を理解することができます。これは、いわば「見えない困りごと」を可視化するための大切なプロセスです。

 

■支援と近年の動向

かつて、発達障害の支援は「できないことをできるようにする」訓練が中心でした。しかし、近年の動向として、「特性を理解し、その子の強みを活かす」という考え方が主流になっています。これは、「できない」を「工夫すればできる」へと変えるポジティブなアプローチです。

  • 個別最適な支援: 一人ひとりの特性に合わせたオーダーメイドの支援が求められています。たとえば、聴覚過敏の子にはノイズキャンセリングヘッドホンの使用を許可したり、書字が苦手な子にはPCのタイピングを促したりします。
  • 早期支援の重要性: 乳幼児期や学童期に特性に気づき、早期に適切な支援を始めることで、二次的な困難(不登校や自己肯定感の低下など)を防ぐことができます。
  • 多職種連携: 医師、臨床心理士、学校の先生、家族など、複数の専門家が連携し、包括的に支援していくことが重要です。
  • 最新の知見と動向: 最近の研究では、発達障害は「病気」ではなく、その子の個性であり、脳の「タイプ」であるという見方が強まっています。また、その特性が特定の分野で驚くべき才能(例:高い集中力、細部への注意)を発揮することもあるとされています。これからの支援は、その子の可能性を信じ、得意なことを伸ばし、本人やご家族が笑顔で過ごせるような環境を整えていくことが最も大切です。

発達障害を持つ人々は、決して少数派ではありません。社会全体が彼らの特性を理解し、多様性を認め合うことで、誰もが自分らしく生きられる共生社会の実現につながります。

 

臨床心理士 / 公認心理師  井上 操

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